農家、農業法人等における障害者福祉事業所との関わりについてのアンケート調査

1.回答票の構成

有効回答81のうち農家は75.3%(61世帯)、法人形態が24.7%(20法人)であった。法人のうち株式会社45.0%、特例有限会社10.0%、農事組合法人20.0%となっている。法人の主な事業内容は「農業生産」が多い。
農地面積は「1ha未満」27.2%、「1~3ha未満」38.3%、「3~10ha未満」12.3%、「10ha以上」が13.6%となっている。年間売上高が1,000万円未満は33.3%であるが、一方で1,000万円以上は29.6%に達している。
常勤の農作業従事者数は「2人」が32.1%、「3~4人」が19.8%、「5人以上」が19.8%と家族経営または企業的経営を営んでいる。また法人では常勤の農作業従業員数は「5~9人」(25.0%)、「10~29人」(25.0%)が主である。20法人のうち5法人が障害者を雇用している。

2.農作業委託について

1. 農作業の委託状況と委託経緯

(1)農作業の委託状況
障害者福祉事業所へ農作業を「委託している」のは86.4%で、調査対象の多くが既に農作業委託を実施しているため高い値となっている。一方、農作業以外の農産物の加工や販売等のみを委託している農家等のなかには、27.3%が農作業を「今後、委託していきたい」という意向を持っている。
(2)農作業委託のきっかけ
福祉側と農業側をマッチングさせるコーディネーターを配置する県が多いため、県職員やコーディネーターやJA等からの紹介や問い合わせをきっかけとする農家等が多い。また障害者福祉事業所からの問い合わせに応えて始めているケースも3割近くに達している。
(3)農作業委託の当初の目的
農繁期の手伝いを期待して始めたのが8割を超え最も多いが、次いで担い手不足のために農地管理をしてもらうとするのが4割強になっている。また農地の維持、さらには規模拡大を図ることを目的とするケースもそれぞれ27.1%、22.9%に達している。一方、行政(県・公社等)の推進策にかかる働きかけによるところも大きい(37.1%)
(4)農作業委託の現在の目的
当初の目的と同様、農繁期の手伝いを期待しているのは8割を超え、担い手不足のために農地管理をしてもらうのは4割強であるが、規模拡大を図ることを目的とするのが増加し22.9%から30.0%になっている。また「地域貢献活動の一環として」も18.6%から30.0%に増加している。
(5)農作業委託の取組開始時期
5年以上前からが22.9%、残りが5年以内に取り組み始めており、最近開始しているところが多い。

2. 農作業委託の内容

(1)生産している農産物と委託している農産物
「野菜」(74.3%)が最も多く、次いで「米」(50.0%)、「果樹」(22.9%)、「花卉等」(12.9%)の順になっている。その中で実際に委託しているのは「野菜」(65.7%)が最も多く、次いで「果樹」(21.4%)、「花卉等」(8.6%)となっており、「米」は少ない。
(2)委託している作業内容
野菜では、「収穫」・「草取り」・「運搬」・「定植」といった肉体的な負担が大きな作業となっている。果樹では、「収穫」・「運搬」・「草取り」が多くなっている。作業負担の大きい作業や一時的に人員を要する作業を委託していると考えられる。
(3)委託先事業所数
農家等が「1事業所」のみに委託しているケースが7割強であるが、3割弱が「複数事業所」へ委託している。作業量が多いときには、1事業所では間に合わないため3つ以上の障害者福祉事業所に委託しているところが71.4%ある。
(4)年間の委託日数、委託期間
「9日以下」は22.9%と最も多く、1か月未満が54.4%を占める。「200日以上」は10.0%、「100~199日」は7.1%と年間を通して委託しているところもある。また農作業委託だけより、農作業委託に加工・販売等の委託が加わると長期になっている。
期間でみると「通年」は24.0%にも達しており、一時的な人員を要するときや農繁期に委託しているが、障害者を年間を通して恒常的な作業者として位置づけて委託していることが窺える。
(5)作業人員
最も多いのは障害者数「3~5人」であり、職員数「1人」である。次いで障害者数「9名以上」、職員数「2名」ないし「4名以上」となっている。サポーターは、サポーター制度を導入している県において作業に加わっている。
(5)作業する障害者の障害種別
知的障害者が半数を占め、次いで精神障害者となっている。

3. 農作業委託の調整プロセス

(1)作業内容、作業量の決定
作業委託側(農家等)が作業内容および量の原案を提示することが最も多いが、次いでコーディネーターや県等の職員が原案を提示するケースが多い。
協議の場へはコーディネーターと県職員が参加して実施することが多いが、外部機関等が参加しないケースもある(3割弱)
(2)書類上の委託契約先
農家等が障害者福祉事業所と直接契約するのは2/3、それ以外はほとんど福祉の中間支援団体となっている。
(3)農業委員会の関与
農作業委託に関して農業委員会はあまり関与していない。
(4)委託料の決定方法(仲介者と委託料の設定基準)
委託料を仲介する多くがコーディネーターであり(42.9%)、「その他」(32.9%)については当事者同士が直接的な協議をすることが多い。委託料の設定基準は 「1日当たりのパート等の作業面積を参考」、「1日当たりのパート等の作業量を参考」にしているのは44.3%、その他は「コーディネーター等の提示した金額」、「地域の障害者の時給相場」で決めていることが多い。
また委託料金の支払い方法は、9割強が「金銭」での支払いとなっており、わずかではあるが一部で現物支払いをしている。
(5)年間委託料
「10万円未満」31.4%、「10~30万円」34.3%、「30~100万円未満」17.1%と多くは100万円未満であるが、「100万円以上」は8.6%ある。農作業委託だけでなく、加工・販売等の委託をしているところや長年にわたり委託をしている場合、委託料が高くなっている。

4. 農業技術指導、作業管理

(1)農業技術指導
6割弱の農家等は指導を行い、その対象は「障害者と事業所職員」の両者(70.7%)となっている。一部ではサポーターへの指導も行っている。「指導していない」(34.3%)と回答した農家については、「もともと技術のある障害者福祉事業所職員が行っている」としている(7割強)。またJAの営農指導員も指導することがある。
(2)日々の作業管理
日々の作業管理については5割の農家等が行っているが、その方法は農家等が障害者福祉事業所職員へ指示し、職員が行っている(約7割)。またJAが行うケースもある。

5. 農作業委託の事前準備と事後対応

(1)事前準備(ハード面とソフト面)
ハード面では「休憩所」、「農器具」、「トイレ」などを準備している。
ソフト面では農家等は初めて障害者を受け入れるため、「既に障害者福祉事業所へ委託している農家等の話を聞いた」、「コーディネーター・県などが開催する研修会・セミナー等へ出席」、「既に障害者福祉事業所へ委託している農家等への視察」などを行った。「特になし」(38.6%)と回答した農家等は、かつて障害者を受け入れたことがあったり、親類に障害者がいた場合、事前に準備する必要はなかったということである。
(2)農作業委託をするにあたって留意したこと
 「障害者を受け入れるための作業内容の検討」をしたり(54.3%)、「障害者を理解するための心づもり」(37.1%)、「障害者を受け入れるために機械、施設の準備」を行っている(20.0%)。また近隣の農家や近所の住民へ配慮した(31.4%)
(3)受け入れ後に行ったこと
37.1%が作業の委託内容を見直し、8.6%が委託料金を見直し、7.1%がトイレや休憩所を設置している。

6. 農作業委託の効果

(1)農作業委託による効果
「障害者への理解が深まった」が57.1%と最も多く、次いで「労働力に余裕ができ新たな作業をすることができるようになった」、「耕作面積を維持できた」、「障害者と交流ができるようになった」となっている。さらに耕作面積が増えた、収穫量が増えたというのがそれぞれ18.6%に達し、17.1%は「収入が増えた」ということである。
(2)農作業による障害者の変化
45.7%は「分からない」と回答しているが、50.0%は「変わった」とみている。変わったと回答した中で94.3%が「精神状態が良くなった」、31.4%が「身体状態が良くなった」とみている。悪化したという回答は0であり、委託者側である多くの農家等は障害者の心身の状態が改善したと感じている。

7. 農作業委託の事前準備と事後対応

(1)必要となっている施設、機械
現在、必要となっている施設、機械は「トイレ」(35.7%)、「休憩所」(18.6%)、「倉庫」(10.0%)があげられている。
(2)その他の課題
「農作物や気候等に合わせて作業してもらう」が最も多く、次いで「障害者福祉事業所間の技術格差」・「農業技術水準のさらなる向上」となっており、作業の臨機応変な対応と一定水準の農業技術の習得が課題となっている。
(3)今後の意向
これまでより多くの作業種類や作業量を委託したいというところが65.7%に達している。やめるは0、縮小は1.4%しかない。

3.事業所からの農作業受託について

農家等は障害者福祉事業所から農作業受託をほとんどしていない。ただし3割は今後受託をしていきたいとしている。

4.事業所への加工、販売等(農作業以外)の作業委託について

(1)加工・販売等の作業委託状況
3割の農家等が農作業以外の作業を委託している。今後委託をしていきたいという意向を持つところも3割に達している。
(2)加工・販売等の作業委託内容
農産物や規格外農産物の販売を委託している農家等はそれぞれ約5割ある。また農産物や規格外農産物の加工を委託するケースもそれぞれ16.0%ある。
(3)加工・販売等の作業委託の開始時期
「1~2年前」および「3~4年前」で64.0%、残りが「5~9年前」で、この10年以内に委託を開始している。

5.事業所からの加工、販売等(農作業以外)の作業受託について

障害者福祉事業所から農作業以外で作業を受託している農家等は0である。受託するつもりはないが約6割、今後受託したいというのは3割となっている。

6.作業以外のその他協力関係について

(1)その他の協力関係
農家等が障害者福祉事業所のために既に協力しているのは14.8%、今後協力していきたいというのは45.7%に達している。
(2)協力内容
協力内容で最も多いのが「農業技術指導」(5割)であり、次いで「資材提供」(3割強)となっている。その他、機械の貸し出しや農地の貸し出し、人を紹介するなど農家等が既に有している物、無理なくできることなどを提供、協力している。
報酬については回答件数は多くないが、「農地貸し」は有償、「農業機械」・「資材提供」は有償と無償で、「農業技術指導」は無償で行っている。
(3)協力のきっかけ
障害者福祉事業所からの問い合わせに応えて始めたところが多く(6割弱)、一部では県などの紹介や問い合わせがきっかけとなっている。
(4)開始時期
この4年以内に開始したところが多く(5割)、すべてこの10年以内に協力を開始している。

7.今後の農福連携の取り組みについて

(1)農福連携の期待分野
今後、障害者福祉事業所へ期待したいのは農作業86.4%、地域の農地管理が43.2%と農業の担い手として期待している。また加工や販売への期待もそれぞれ4割を超えている。
(2)農福連携に必要なこと
農福連携には福祉側と農業側のマッチング(67.9%)およびコーディネーターの存在(51.9%)が欠かせない。また助成金等にかかる情報(53.1%)、障害者へ指導等を行うサポーターを望んでいる(40.7%)